裏毛?裏パイル?裏起毛?ースウェットの生地のこと

Tシャツシーズンが落ち着くと、自然と始まる『スウェット』シーズン。

スウェットといえば、セットアップで主に部屋着として着られがちの時代もありましたが、今ではカジュアルファッション界において秋冬には不可欠のおしゃれアイテムです。各ショップには、カラー・シルエットだけでなく、トレンドを盛り込んだ”プリント”の入ったパーカーやトレーナー(スウェット)が多数展開されます。

この『スウェット』とは?
表地と裏地で2層構造になっているニット生地のことです。[sweat=汗取り]という意味を持つワードが使われている理由は、かつて、とあるスポーツ系のブランドがスポーツ用とファッション用を区別するためにトレーナーを「スウェット」と呼び始めたことからなのだとか。ですから英語では”sweat”ではなく”sweatshirt”と呼ばなければ通じないのだそうです。

スウェットの種類【裏毛(裏パイル)】【裏起毛】の違いについて

さて、スウェットの2層構造は、[表地]は滑らかな編み目に対し、[裏地]のほうにはいくつかの種類があります。

”裏毛”とか”裏パイル”とか”裏起毛”とか・・・見たり聞いたりしたこと、ありませんか?
「どう読むの?」「違いは何?」と、私たちはお客さんと日常的に話す疑問のひとつです。

まず、”裏毛”は”うらけ”と読みます。
実は”裏パイル(うらぱいる)とは全く同じものを指します。※

裏毛=裏パイルは、見ての通り、毛足=パイルをループ状に編み込んだ裏地のニット生地のこと。このループ状のパイル生地はまさしくタオルと同じ形状なので、吸水性・吸湿性に優れています。
人一倍汗をかく子どもさんやスポーツシーンにふさわしいニット素材としてトレーナーやパーカーに採用されています。少し肌寒いかな?という季節の羽織りや、軽量感を活かして重ね着ファッションとしても最適です。

※つい最近も、このサイト(moriflo.jp)に「裏毛」「裏パイル」と混在しているので混乱させてしまったことがありました。申し訳ありません。こちらでは各ウェアメーカーさんで採用している呼称をそのまま表記させてもらっていますのでご了承ください。

一方の、”裏起毛”は、”うらきもう”と読みます。
裏毛の繊維を起こし、毛羽を一定の長さにカットした生地で、ふわふわした見た目です。

ポリエステル混が多く使われていて、柔らかくて空気を含みやすいため、裏毛(裏パイル)よりは保温性が高く毛布のように暖かいです。熱を溜めやすいので寒いときに役立ちますが、吸水性は高くないので、汗をかくようなスポーツシーンには向いていないです。
裏起毛アイテムは生地にボリュームがあるので、重ね着をすると着膨れしてしまうため、ファッションとして取り入れるならインナーには薄手のものが良いでしょう。

その保温性の需要の高さから、最近はトップスだけでなく、ボトムスやインナーにも裏起毛を採用したものが増えていたりしますよね。四季折々でその日の気温や着用シーンに応じて、スウェットコーデを楽しめるといいですね。

★プリント屋からの一言。

実は”裏起毛”アイテムは、その素材の特性から『シルクプリント泣かせ』なところがあります…。

シルクプリント加工においては、商品がプリント台(↓写真)に張り付くことが重要です。

この張り付きが、裏起毛素材はとても不安定です。要するにくっつきが悪いのです。

不安定だとどうなるか?というと、
・インクを落とした後の版に生地が持っていかれてしまいプリント部分が乱れる
・インクの二度刷り,三度刷りができないので発色が劣ってしまう
・多色刷りができない
など。せっかくのオリジナルプリントが残念な仕上がりになる可能性が高い・・・。

そんな理由から、一度デザインを見させてもらい、これらをクリアできそうか?の確認とともに、他の加工方法のご提案などをさせてもらっています。裏起毛アイテムだから加工ができないわけではありませんので、どうぞお気軽にご相談ください。

プリント台にアイテムをセットする風景